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不思議な安らぎ ギャヴィン・ブライヤーズの音楽

 ヒーリング、癒し系とかいう言葉が日本で流行っているようだ。私は日本を離れて長いのでよく分らないけれど、ストレスにさらされている現代人はみんな癒されたいという気分なのだろう。そういえばブリスベンにも最近ショッピングセンター内に、チャイニーズのクイックマッサージのサロンなんかが増えてきて人気のようである。

 ヒーリングミュージックというジャンルも聞かれるようになった。でも音楽にこだわりのある人々には、そういうジャンルわけにされた音楽を聴いた所で癒された気持ちに果たしてなれるのだろうかとも思う。好きな音楽は人によって様々。静かなドビュッシーやバッハのピアノ曲で癒される人もいれば、クラシック音楽を聴くといらいらする人もいるかもしない。スラッシュメタルやノイズ系の音楽を聴いてストレスを発散してる現代人がいることも確か。最近うちの僕ちゃんがRage(ABCで週末オールナイトでやっているロックのヴィデオクリップ番組)でたまたま見つめて気に入ったバンド、ファントマス(フェイス・ノーモアのヴォーカリストがやってるアヴァンギャルドバンド)を聴いたけど、ワイルドでしたねえ。ジョン・ゾーンみたい。奈良美智のアートがCDに使われてた。まあもうちょっと若かったらこういう音楽も聴けるかもしれないけど・・・。

 初めての出産の時、病院に自分がリラックスできるお気に入りの音楽を何枚も持って行った。10時間以上にわたる陣痛をブライアン・イーノギャヴィン・ブライヤーズの音楽、それにラヴェンダーなどのエッセンシャルオイルの香りで部屋いっぱいにして乗り切ったのだ。マッサージオイル(マギー・ティスランドの本から)も作っていったので、本に書いてあるように夫にも協力してもらった。いまだにこれらの音楽を聴くと、あの時(出産)のことを思い出すのだ。

 

 病院のミッドワイフ(助産婦さん)は、私の部屋に入るなり 「なんてピースフルな部屋なの!」 と言っていた。陣痛を少しでも楽にするために、音楽を聴くことをここではよく勧められるのだが、どういう音楽を選ぶかは本人次第。ミッドワイフは、「AC/DC(オーストラリアのハードロックバンド)をかけて出産した人もいたけど、あれには驚いたわね。」と言ってたのには可笑しかった。人によって慰められる音楽とはこうも違うものなのか。陽気なオーストラリア人のこと、楽しくお産したかったのかな?もしかして立ち会った夫君が聞きたかっただけだったりして。そうだったらとても気の毒!

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 ブライヤーズの 『タイタニック号の沈没』(上左)と 『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』(上右)。『タイタニック号の沈没』は69年に作曲され、これは90年にCDのために録音されたものだ。この豪華客船が沈没する瞬間まで弦楽器奏者が賛美歌を演奏していたという事実に基いて、その水に沈んでいく音の状況まで再現している。

 『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』は93年の作品。ピーター・バラカンさんがミュージックマガジン誌でその年のベストアルバムに挙げていたので迷わず手に入れた。その音楽は、ホームレスの老人が即興で唄った賛美歌の録音をループにし、オーケストラと重ねそれが延々と(75分)続くもの。トム・ウェイツが後半から歌に加わっていくのがまた感動的。くせになるようなミニマル(反復)音楽の味わいと陶酔感。口では説明できない不思議な安らぎを与えてくれるのだ。夜ベッドに入ったとき心地よく聴けるのは良いのだけれど絶対に眠らせてくれないのだ。次はどうなる?と聴き入ってしまうから。絶対に最後まで聴いてしまうというのがこの音楽を好きな人の共通の意見みたい。でも、何これ?という人もきっと大勢いると思う。

 

 私が音楽に夢中になり出したのは小学校の頃。父親がクラシック音楽愛好家で、いろんな曲を聴かされた。チャイコフスキー、ボロディン、リムスキーコルサコフ、ムソルグスキー。バッハ、ヘンデル。モーツアルトやヴィヴァルディ。ドヴォルザーク、メンデルスゾーン、ドビュッシーやラヴェル、ホルスト、ヴォーン・ウィリアムス・・・。なんて心を震わせるわせる音楽なんだろうと思った。そのせいなのか、日本の歌謡曲にはほとんど興味がわかず、小学校の頃同級生がアイドル御三家に夢中になっててドーナツ盤を集めていた時、私は家でクラシックの名曲レコードを毎日のようにポータブルプレイヤーでかけて満足していたなんて、ちょっとおかしな子供だったかな。

 中学の時にステレオラジカセを買ってもらって、FMラジオでたくさんの音楽と出会える楽しみを知った。今ではステレオラジカセなんて当たり前だが(いや待てよ。カセットはもう過去のものか)、ナショナル製でステレオラジカセの最初のモデルだった。いったい何が入ってたのか知らないけどとんでもなく重かった。いまだに健在らしく母親が使っているから驚きだ。さすが日本製!でももう30年は経ってるね。あの時よく聴いていたのはNHKの朝6時頃の「バロック音楽の楽しみ」(だったっけ?)。古楽が好きになったのはこの番組のせい。アクースティックなナチュラルな音に敏感だったので、その後洋楽に夢中になって行った時、サイモン&ガーファンクルをはじめとするフォーク&ロック、80年代のネオアコースティックムーヴメント、イギリス・アイルランド方面のトラディショナル音楽に惹かれたのは自然の成り行きだったのかもしれない。

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 大学生の時、父親のレコードラックからサイモン&ガーファンクルのアルバム 「ブックエンズ」 を見つけた。父親いわく、「ヨーロッパからの高価な直輸入盤で日本製のレコードとは全く音が違う」んだって。うん確かにすごい音だった。静かな1曲めの後続く2曲目の『セイヴ・ザ・ライフ・マイ・チャイルド』が始まる時の驚きと言ったらなかった。まるで電気が走ったみたい(ほんとにそういう音なんだけど)。S&Gのアルバムは全部LPで揃えたのだけれど日本に置いてきたまま。CDで聴きなおそうかな。でもレコード盤に針を落とす時の緊張感ってぞくぞくしてよかったなあ。ポール・サイモンのソロアルバムも大好き。

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