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U2 新作とレバノン杉と杉本博司

 この2週間ほど飽きることなく毎日繰り返し聴いている2枚のCD がある。

 1枚はU2の新作 『ノーライン・オン・ザ・ホライズン』。 もう1枚は同じくアイルランドのシンガーソングライター、Luka Bloom ルカ・ブルーム (←公式サイト。音が出ます。来週のコンサートが待ち遠しい!) の昨年リリースされた新作 『イレヴン・ソングス』。 ルカ・ブルームについてはまた今度時間をとることにして、今回はU2の新譜についてあれこれ想い巡らしてみよう。

 考えてみたらU2の新作を発売と同時に手に入れるなんて、93年の 『ズーロッパ』 以来だった。2000年発表の 『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』 なんて、7年も経ってから初めて聴いたし、前作の『原子爆弾解体新書』 も発売後3ヵ月位は経ってからだったもの。

 U2が私に教えたくれたものは量りしれないほどある。20代の私は救いようのないほどの(笑)U2信奉者だった。アルバム、シングル、ヴィデオ、インタヴュー雑誌は全て手に入れ、ファンクラブにまで入ってた(4 Freedom 今でもあるのかな?会員番号354だったっけ?会員証も持ってたけどもう何処へか消えてしまったよ)。ヨシュア・トゥリー・ツアーを観るためにウェールズとスコットランドまで行ってきた。そしてアイルランドへ二度も渡ったのだ(主にケルトの史跡めぐり)。 

 さてU2新譜。僕ちゃんが BIG W (いつもここですみません)で $20 で見つけたからって買って来てくれたので、すぐにふたりで聴いてみた。 

 ところがである。 

 ・・・Boring ・・・

 これを誰かがつぶやくのは時間の問題だった。

No_line_on_the_horizon_2 

 誰かが言うだろうとどちらも思っていたけれど、二人で目を合わせた時にどちらともなくこぼれてしまった 「退屈」 の一言。ちょっとがっかりしながら、買い物へ行かなきゃと全部の曲が終わるのを待てずに(少し後ろめたさはあったが)私は音楽を止めてしまったのだ。

 日本の新聞(朝日)ではイギリスチャートで初登場一位と報じていた。日本のアマゾンのカスタマーレヴューでもかなり評判がいい。出たばかりなのにみんなはどのくらい聴いて評価しているのだろう?と不思議に思った。

 翌日。とりあえず独りで全部通して聴いてみることにした(なにしろ僕ちゃんはいぢわるだ。エッジはギターが弾けないと思っている。ミュージシャンの彼はミュージシャンに厳しい。そんなヤツは放っておく)。そうしたら驚くべき発見をしたのだ。前日に途中で切ってしまったその後に続く曲。11曲目。 おや? 『ザ・パール』 なんてターンテーブルに入れてあったっけ?

 シーダーズ・オブ・レバノン CEDARS OF LEBANON

 このトラックでは、イーノ、バッド・ウィズ・ラノア 『ザ・パール』 (以前の記事「空間を浄化する音楽」 )の ”アゲインスト・ザ・スカイ” という曲ににボノが詩をかぶせて歌っているのだった。ルー・リードが歌うような抑揚のないメロディー。コーラス部分がゆっくり語りかけるジェーン・シベリーのようなハーモニー (ブライアン・イーノがプロデュースした彼女の 『少年の日』 も私の大切な一枚) 。 

  Return the call to home...

ユーチューブに誰かのお手製がもう上がってた。ちょっと笑えるボノの横顔(その人が描いたのかな)をずっと見てる必要はありません。←これはもう削除されてた。

下は新作プロモ。撮影はアントン・コービンです。

 『ザ・パール』 の、海の底に沈んでいくかのようなアトモスフィアにくるまれた新しい音楽。

 それとレバノン杉。

 レバノン杉・・・。

 レバノン杉について私は何も知らなかった。

 レバノン杉は未来を知っている

 樹齢6000年のレバノン杉は、この大地をレバノン杉でおおいつくことの出来る日を、
そして人とともに共生できる明日を夢見ていることだろう。彼は僕たちの未来を知っているに違いない。

 ツタンカーメンの棺はこの木で出来ている。

 レバノンの国旗に描かれている木。

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 考えてみたら、U2とイーノ&ラノアの付き合いは84年のアンフォゲタブル・ファイアーからだからもう25年になるのだ。U2は既に人生の半分以上、彼らと一緒に音楽を創り続けている。今回のアルバムは初期3枚のアルバムを手がけた スティーヴ・リリーワイトも加わってプロデュースしている。 

 私自身の人生も振り返ってみてしまうそんな感情を起こさせる、長く短い人生のフィルムのようなアルバム。なんだかヴィム・ベンダースの映画のよう。そうだ、私だって人生の半分以上をU2の音楽と共にしているのだ。

 そして3回目を聴いた時、このアルバム2曲目にかかる ” MAGNIFICENT マグニフィセント”  という曲の素晴らしさにやっと気付いた。間違いなくこのアルバムのベスト曲といっていいと思う。

オフィシャル・ヴィデオはここに

 マグニフィセント 

 素晴らしいよ

 僕は生まれた 

 僕はきみと一緒になるために生まれた

 この場所とこの時間に

 あの後、そして僕が手掛かりを見つけていないあの後以来

 ただ韻を壊すだけ

 この愚かさが心に黒と青を残せるんだ

 愛だけが、ただ愛だけがそんな痕のようなものを残せるんだ

 だけど愛だけが、ただ愛だけがそんなひどい傷を癒せるんだ

 僕は生まれた

 僕はきみのために歌うために生まれた

 選択の余地はなかったけどきみを抱き上げるよ

 それからきみの欲しい歌ならなんでも歌うよ

 きみに僕の声をあげるよ

 子宮からの最初の叫び 歓びにあふれた雑音・・・

 愛だけが、ただ愛だけがそんな痕のようなものを残せる

 だけど愛だけが、ただ愛だけがそんなひどい傷を癒せる

 僕たちが死ぬまで弁明して そして僕は大きくなる (magnify) だろう

 素晴らしい (Magnificent)

 素晴らしいよ

 愛だけが、ただ愛だけがそんな痕のようなものを残せる

 だけど愛だけが、ただ愛だけが僕たちの心をひとつにする

 僕たちが死ぬまで弁明して そして僕は大きくなるだろう

 素晴らしい

 マグニフィセント

 Magnificent

 対訳:ヨーコ

日本盤の訳は中川五郎さんか山下エリカさんかな?

 最後に、このアルバムのジャケットに使われてる写真について(アーティスト写真はおなじみオランダ人のアントン・コービン。彼も25年来)。

 これはニューヨークを基盤に活躍している日本人写真家、杉本博司によるものだそうだ。私は恥ずかしながらこのアーティストについて全く知らなかったので、早速調べてみたらちょうど金沢21世紀美術館で展覧会を開いているのを見つけた。すぐに私にとって今とても気になるアーティストのひとりになった。

 以下は金沢21世紀美術館のサイトからの転載。

Sugimoto

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カリブ海、ジャマイカ   © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

 「歴史の歴史」 杉本博司

 アートとは技術のことである。眼には見ることのできない精神を物質化する為の。

 私のアートとは私の精神の一部が眼に見えるような形で表象化されたものである。いわば私の意識のサンプルと言っても良い。私はアーティストとして長年この技術を磨くことを心がけてきた。

 アートの起源は人類の起源と時を分ち合う、それは人間の意識の発生をもってその始源とするからだ。私は私の技術を磨く過程の中で、学ぶべき先人の技術を体得する為の手本が必要とされるようになっていった。手本は先人が到達すことができた地平のサンプルと呼び変えても良いだろう。一つのサンプルを入手してその技術を会得すると、会得されたその精神は又次のサンプルを欲するようになる。一つのことを理解することとは、その奥にさらに深い未知があるということを理解することだ。こうして私のサンプル収集は連鎖反応を起こして、どこへ行くとも知れず漂流するようになった。  

 ここに集められたサンプルは、私がそこから何かを学び取り、その滋養を吸収し、私自身のアートへと再転化する為に、必要上やむを得ず集められた私の分身、いや私の前身、である。私はそれらのサンプルから、過去が私の作品にどのように繋がってきたのかを類推し、その現場を検証するという空想に遊ぶようになった。旧石器時代の石器を握ってみると私の手のひらにぴたりと収まる。私は旧石器時代人の革命的な技術を体感するのだ、蒙昧から意識への。そしてより鋭利になった新石器時代の石器を手に取ってみる。私は一瞬にして数十万年の人類の経緯を諒解する。私はエジプトの死者の書に描かれた象形文字と神々の像に見入る。死者を覆っていたであろうこの一枚の麻布が五千年という時間の物差しを私に突き つける。ゆっくりと流れていた古代の時間は急速に加速しながら現在の私に向かって流れて来るように思える。昔千年かかった変化が今は数十年で達せられてしまう。時間の矢は今も加速を続け、ある臨界点に向かいつつあるようだ。

 天地開闢以来、幾多の文明が栄え滅びてきた。その度に歴史は書かれ又書き換えられてきた。歴史とは生き残った者が語り継ぐ勝者の歴史に他ならない。語り継ぐ者のいなくなった敗者の歴史は遺物となって その内に閉じ込められ、私に何かを語りかけてくる。数十億年前に絶滅してしまった生命の種が化石となって私に語りかけてくるように。こうして私は歴史から一歩距離を置いて、私が収集してきた遺物を眺め暮らすようになった。  

 私の集めた遺物達は、歴史が何を忘れ、何を書き止めたか、そんな歴史を教えてくれる。

             

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コメント

ご無沙汰しております。こちらはお陰様で家族共々やっと生活に落ち着きが出てきたところです。

U2の新しいアルバム、私も通勤途中で聴いています。華というよりは、深みのある曲が多くて、初めて聴いた時からUnforgettable Fireのイメージを思い浮かべています。私はエッジのギターが大好きなので(笑)、非常に気持ちよく聴いていますが、やはり前作から気になっているのはボノの声。あの艶のある伸びがなくなりつつあるのをとても悲しく思っています。私も彼らと年をとってきたので、何とも言い難い気持ちです。

まだ引っ越して間もないのに、今の家は1年で追い出されるかもしれないので、近隣で家を探しています。もう少し値段が下がってくれると有難いんですが。yokoさんのご紹介のお陰で、こんな住み心地の良い地域で生活することが出来て、とても感謝しています。

ぐりーんさん
近況が聞けて嬉しいです。
いえいえ、私の紹介のお陰だなんてとんでもない。きっと何かのご縁があったんでしょう。
私はボノの声のことは気がついていませんでした。おじさん声も好きですけどね(笑)。
「お~お~お~」 というシャウトが多いのを今回のアルバムで耳に付いたのですが、これって初期のスタイルに良く似てるなあと思いました。彼らはファーストアルバム 『ボーイ』 をもう一度吹き込むそうですね。ほんとかな?まあどんなになるか待つことにします。

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