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1954年7月27日


 石垣りんさんは、社会問題を告発する詩をいくつか残している。これは59年前の今日の日記。彼女は今、雲の上からどんな想いで日本を見つめているだろうか。

 

日記より 

 

一九五四年七月二七日
これは歴史の上で何の特筆することもない
多くの人が黙って通りすぎた
さりげない一日である。

 

その日私たちは黄変米配給決定のことを知り
その日結核患者の都庁坐り込みを知る。

 

むしろや毛布を敷いた階段、廊下、庭いっぱいに横たわる患者ストの様相に
私は一度おおうた眼をかっきりと開いて見直す。

 

明日私たちの食膳に盛りこまれる毒性と
この夜を露にうたれる病者と
いずれしいたげられ、かえりみられぬ
弱い者のおなじ姿である。

 

空にはビキニ実験の余波がためらう夏の薄ぐもり
黄変米配給の決定は七月二四日であった、と 新聞記事にしては、いかにも残念な付けたりがある、

 

その間の三日よ
私はそれを忘れまい。

 

水がもれるように
秘密の謀りごとが、どこかを伝って流れ出た
この良心の潜伏期間に
わずかながら私たちの生きてゆく期待があるのだ。

 

親が子を道連れに死んだり
子が親をなぐり殺したり
毎夜のように運転手強盗事件が起り
三年前の殺人が発覚したり、する。
それら個々の罪科は明瞭であっても
五六、九五六トン
四八億円の毒米配給計画は
一国の政治で立派に通った。

 

この国の恥ずべき光栄を
無力だった国民の名において記憶しよう。

 

消毒液の匂いと、汗と、痰と、咳と
骨と皮と、貧乏と
それらひしめくむしろの上で
人ひとり死んだ日を記憶しよう。

 

黄変米配給の決定されたのは
残念ながら国民の知る三日前だった、と
いきどおる日の悲しみを
私たちはいくたび繰り返さなければならないだろうか。

 

黄変米はわずか二・五パーセントの混入率に
すぎない、
と政府はいう。

 

死んだ結核患者は
あり余る程いる人間のただ一人にすぎず
七月二七日はへんてつもない夏の一日である、
すべて、無害なことのように。

 

  (現代詩文庫46 「石垣りん詩集」思潮社より)

 黄変米(おうへんまい)事件についてはここで詳しく読める。当時の厚生大臣が試食して安全性をアピールするなんて、まるで原発事故後の今日の政府の対応そのものだ。


P1020636

 

視察

 

お正月に
東京からエライ人が視察に来ました。
街を歩く娘さんを見て
「公害、公害、というけれど
みんな晴着を着とるじゃないか」
と笑ったそうです。
エライ人というものは
ほんとに
エライことをいうものです。

 

利益

 

海を売って十円もうけ
山を売って十円もうけ
空を売って十円もうけ
健康を売って十円もうけ
人買いをした山椒大夫
安寿・厨子王の昔よりも
もっとあくどい会社のあきない。
としよりを売って十円もうけ
子供を売って十円もうけ
明日を売って十円もうけ
もとでの安い薄利多売、
海を売って十円もうけ
山を売って十円もうけ
空を売って――。

 

あやまち

 

安らかに眠って下さい
過ちは繰り返しませぬから

 

あれは広島、原爆慰霊碑のことば。

 

あやまち について 
私たちはいつも感違いする
同じあやまちに神経質になる 
そしていつも 
新しいあやまちをおかす

 

四日市では 
もうずいぶん前から何かがはじまっている
あやまちでなければいい。

 

 上の詩は、東海テレビ製作ドキュメンタリー「あやまち・・・1970年夏 四日市」で朗読された詩篇から。その中の「算数」では、公害患者で自殺した木平さん一家の無念のストーリーが綴られている。

さようなら日本
どうしても一家がしあわせになれなかった国よ、さよなら。

これが木平さん一家の答えです。

 名古屋に住んでいた私は、四日市の石油コンビナートの煙突から立ち昇る煙や炎はいまだに恐ろしい光景として脳裏に焼きついている。そういえば、当時の人気アニメ「タイガーマスク」でも取り上げられたのだ。憶えている人いるかなあ?こんなブログ記事発見(四日市、タイガーマスクで検索すると色々出てくる)。

   そして水俣病・・・。

 

川のほとり

 

川の中を魚が泳ぐ。
魚の中を血が流れる。
血の中に川が生きている。
生きている川に水銀がまじる。
水銀の川が人間の口にはいる。
人間の中を川が流れる。
黒い髪の毛の支流まで水銀がさかのぼる。
群れをなすへんな魚。
みんながキギョウと呼びはじめた。




P1020786

 ここで取り上げた石垣りんさんの詩は現代詩文庫46「石垣りん詩集」(思潮社刊)の一部です。

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