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「シカタガナイ」を追放

 原発の持続不可能性、プルトニウムの危険性などについて、専門家の立場から警告を発し続けた高木仁三郎氏の本『市民科学者として生きる』(岩波新書)の終章の始めに、カレル・ヴァン・ヴォルフレン著『人間を幸福にしない日本というシステム』からの引用がある。                                               

   こんなふうに説得を進めさせて下さい。個人はすべて、少しだけなら自分の環境を変える能力がある。(中略)そうなる前提として、あなたは基本的で重大な一歩をまず踏み出さなければならない。(中略)つまりそれは、日本で最も頻繁に使われる政治用語「シカタガナイ」をあなたの辞書から追放すること。”

 
                                                  

 21日は参議院選挙。在外選挙は7月5日に始まり、私は先週の初めに仕事帰りに日本領事館で投票してきた。いつも思うのだが、領事館の投票所(事務所ではなく同じフロアの別室)に待機している役員全員(5、6人)から投票会場に来た私一人に視線が集まるので(投票に来る人はまばらだ)いつもものすごい緊張感を伴う。この緊張感に勝てなくて、というか崩したくていつも何か話をしてしまいたくなる衝動に駆られるのだがこれは適切な行為ではないのかもしれない(実際してしまった)。

 今回の選挙で違ったことは、今まで在外選挙証保持者へ直接封書で送ってくれた知らせがなかったことだ。ネットで情報が入ってくるから私はいいけれど、ちょっと不親切ではないかと思った。訊いたら「今回から廃止になった」ということ。ちなみにこのサイトによると昨年の衆院選で在外選挙登録していても投票した有権者はたった20%程度だったそうだ。

 思えば、在外選挙制度が始まったのがちょうど私がオーストラリアに来た年からだった。その時以来の登録だったので、地元の区役所から届いた在外選挙人証の欄は今回の投票でいっぱいになった。次の選挙に必要な新しいカードを発行するために申請書を領事館に提出したのだが、その時スタンプいっぱいになった古いカードを持っていかれたのが残念だった。皆勤賞とかないの(笑)?

 しかし近頃の領事館のセキュリティーチェックの厳しさには驚くものがある。用事がある2つの部屋に行くのに2人の警備員がIDカードの確認と金属探知機片手で歓迎してくれるのだ。今までこんなんだったっけ?領事館入場では携帯電話とカメラも入り口で預けなければならなかった。

 今日はそんなのほほんとした気分でこれを書いているわけではないのだ。とにかくこの1、2週間選挙と政治関連のニュースに目が離せない。選挙のため軒並みに増えてくるツイッターのタイムラインを無視できなくて毎晩iPodタッチ(ツイッターに便利、だけど目が悪くなるなあ)を持って布団に入っていたら昨日で総ツイート数が4000に届いてしまった。ほとんどがリツイートけれど、もうとにかく黙っていることなんてできない。たかが一票、されど一票。

 昨夜読むことが出来たジブリの会報”熱風”の特集「憲法改正」には涙が出る思いだった(無料PDF配信は明日20日18:00まで)。私達は政治に参加しなくてはならない義務などない。参加出来る権利があることを頭にいれておくべきだ(ちなみにオーストラリアでは投票は義務である。投票会場の小学校などではケーキストールや古本ストールなんかが出てちょっとしたお祭り)。 平和な暮らしを他人任せにしてはいけない。

 追記:7/26のBLOGOSに宮崎さんの「憲法を変えるなどもってのほか」が全文掲載されました。

 追記2:PDFのリンクがみつかりました。

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 最後に茨木のり子さんの『詩のこころを読む』で知った金子光晴の詩の一部をシェアしたいと思う。

 敗戦の3ヶ月前に疎開先の山中湖の小さな山小屋で、発表する当てもなく、見つかれば死刑という状態で綴った詩。詩の全部はここで読むことが出来ます。
                                               

寂しさの歌 金子光晴

国家はすべての冷酷な怪物のうち、もっとも冷酷なものとおもはれる。それは冷たい顔で欺く。欺瞞はその口から這ひ出る。「我国家は民衆である」と。
 ニーチェ 『ツァラトゥストラはかく語る。』

     四

遂にこの寂しい精神のうぶすなたちが、戦争をもってきたんだ。
君達のせゐぢやない。僕のせゐでは勿論ない。みんな寂しさがなせるわざなんだ。

寂しさが銃をかつがせ、寂しさの釣出しにあつて、旗のなびく方へ、母や妻をふりすててまで出発したのだ。
かざり職人も、洗濯屋も、手代たちも、学生も、
風にそよぐ民くさになつて。

誰も彼も、区別はない。死ねばいゝと教へられたのだ。
ちんぴらで、小心で、好人物な人人は、「天皇」の名で、目先まっくらになつて、
腕白のやうによろこびさわいで出ていつた。

だが、銃後ではびくびくもので
あすの白羽の箭(や)を怖れ、
懐疑と不安をむりにおしのけ、
どうせ助からぬ、せめて今日一日を、
ふるまひ酒で酔つてすごさうとする。
エゴイズムと、愛情の浅さ。

黙々として忍び、乞食のやうに、
つながつて配給をまつ女たち。
日に日にかなしげになつてゆく人人の表情から
国をかたむけた民族の運命の
これほどさしせまつた、ふかい寂しさを僕はまだ、生れてからみたことはなかつたのだ。
しかし、もうどうでもいゝ。僕にとつて、そんな寂しさなんか、今はなんでもない。

僕、僕がいま、ほんたうに寂しがつてゐる寂しさは、
この零落の方向とは反対に、
ひとりふみとゞまつて、寂しさの根元をがつきとつきとめようとして、世界といっしょに歩いてゐるたった一人の意欲も僕のまはりに感じられない、そのことだ。
そのことだけなのだ。 

 
 昭和二〇・五・五 端午の日
       ――詩集『落下傘』

 
                                                  

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コメント

私も金曜日に不在者投票してきました。今は期日前投票というらしいですが。39年間でG民に入れたことは1回もありません。死に票ばっかです。sweat01

suikaさん
私も30年間G民には一票たりとも投票してませんが(笑)、一度も投票した候補者が当選したことがないという・・・。
映画作家の想田和弘さんはG民党のことをあれは政党ではない悪党だと言っていておかしかったですが次の瞬間には寒気がしてきました。
国民の政治への無関心さにはさらに寒気。
今日は一度もツイッター見てないけれどどうなってるかなあ。。。
福3も良くないみたいですね。

訂正。↑3号機と書くべきでした。

原発、TPP、憲法9条と重要なことがたくさんあるこの時期のなのに
日本の投票率の低さには本当に愕然とさせられます。
私もし~んと静まり返ったシドニーの領事館で在外投票をしてきました。
もちろんG民には一度もいれたことはありません。
TPP=反対、原発=即時ゼロ、憲法9条=護憲 
この3点がはっきりしている党しか信用できません。
「平和な暮らしを他人任せにしてはいけない」 同感です。

領事館によって対応が異なるようですね。
シドニーの領事館からは封書が届きました。領事館に用があるときは
携帯を入り口であずけますが、今回の投票所に入るときは
警備員はいたけど携帯も預けることなくすんなり入れましたよ。

やっぱり死票になりました。sweat01

元気なゾウさん
同志を得て嬉しくなっちゃいました~。dog
選挙前はうちのPCが遅くてYouTubeがほとんど観られなくて悔しい思いをしたんですが、この間の日曜日にPCのスピードが戻って前日の土曜日の選挙フェスを観て泣きました。
今回ネット選挙が解禁ということでどんなふうに変わっていくか期待がありましたが、海外にいる私たちには動向が手に取るようにわかってよかったと思います。
しかし、いかんせん投票システムがアナログなのがネックですよね。
日本の役所に申請して在外選挙証を送ってもらうのに3ヶ月。
日本の投票日までに郵送が間に合うように早めに在外選挙の投票をしなくてはならないとか。
僻地に住んでいてどんなに頑張っても投票が間に合わないという海外在住の有権者もあるそうです。
この時代にもっと確実に世界のどこからでも投票できる権利があってもいいのになと思います。
しかし、選挙が終わった途端、東電が原発汚染水(海洋汚染)を認めたりして本当に憤りを感じます。

説明が悪くてごめんなさい。
こちらでも携帯やカメラのチェックは領事館入場の際で、投票所ではIDの確認と金属探知機のチェックだけなのでシドニーと同じだと思います。

suikaさん
>やっぱり死票になりました。sweat01
私も上に同じ。sweat01

 お久しぶりです。
 私は「当落線上の非G民」に決めているんで、いつも死票です。sweat01
 だから前回も民○党には入れませんでした。

suikaさん

久しぶりですね。お元気ですか?
私は選挙後の日本からのもろもろのニュースで失望感に打ちひしがれて2ヶ月もブログを書く気力がなかったのです。
でも最近小泉元総理が脱原発を訴え始めたりして驚きました。
これで少しは流れが変わっていくのではと淡い期待も無きにしも非ずです。


気付いたら私も「四」から引用しました。
この時はよく読んでいなかったです。
本当にこんな日本人がいたのかという驚きです。

suikaさん

茨木のり子さんは「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)でこの「寂しさの歌」について、ものすごく丁寧に愛と情熱を込めて語っているんですよね。
彼女の語り口って本当に素敵。

それにしてもあの選挙から1年で日本政府は集団的自衛権閣議決定を下したとは。
でもあきらめない。
「憲法9条にノーベル平和賞を」署名が10万人突破したそうです。
http://nobel-peace-prize-for-article-9.blogspot.jp


suikaさん

そうそう、それから彼女の「うたの心に生きた人々」でさらに金子光晴についてもう少し知ることになったのですが本当に驚きの連続でした。
「子供の徴兵検査の日に」
http://www.haizara.net/~shimirin/on/akiko_03/poem_hyo.php?p=36
「奴隷根性の歌」。
http://plaza.rakuten.co.jp/iyomantenoyoru/diary/201008200000/
「森の若葉」
http://siika-kotobanohana.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302062521-1

yokoちゃん、金子光晴の素晴らしい本を手に入れました。後で日記に書きます。ホントにyokoちゃんや他の人に見せたい本です。

suikaさん

すごい!!!!!!!
私まで興奮してしまいました。
動画のリンク貼っちゃいます。
http://youtu.be/ngiFZcBu4H8

yokoちゃん、おはよー!
続編も書きました。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1930148252&owner_id=6655875

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