心の底の静かな湖

 茨木のり子さんの詩を二編。 

  時代おくれ  


車がない   
ワープロがない   
ビデオデッキがない   
ファックスがない   
パソコン インターネット 見たこともない   
けれど格別支障もない


そんなに情報集めてどうするの       
そんなに急いで何をするの       
頭はからっぽのまま  


すぐに古びるがらくたは   
我が山門に入るを許さず       
   (山門だって 木戸しかないのに)   


はたから見れば嘲笑の時代おくれ   
けれど進んで選びとった時代おくれ             
         もっともっと遅れたい    


電話ひとつだって   
おそるべき文明の利器で   
ありがたがっているうちに   
盗聴も自由とか   
便利なものはたいてい不快な副作用をともなう   
川のまんなかに小船を浮かべ   
江戸時代のように密談しなければならない日がくるのかも   


旧式の黒いダイアルを   
ゆっくり廻していると   
相手は出ない   
むなしく呼び出し音の鳴るあいだ   
ふっと   
行ったこともない   
シッキムやブータンの子らの   
襟足の匂いが風に乗って漂ってくる   
どてらのような民族衣装    
陽なたくさい枯草の匂い   


何が起ろうと生き残れるのはあなたたち   
まっとうとも思わずに   
まっとうに生きているひとびとよ 

 

 

      

  時々テクノロジーに魂を抜かれているような気になって、ネットの膨大な情報の前に気分が悪くなることがある。ネットから離れられるキャンプに行くとほんとに心が開放される。でもやっぱり情報が欲しい。あと10年したら私達は何を求めて生きているんだろう。

 

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久しぶり

Happy New Year!

 ずっと元気でした。先週から新学期が始まって、スクールホリデイ中はずっとお休みをもらっていた私も仕事再開。 7週間ぶりに戻った職場のバックルームが改装されてキッチンが広くなって嬉しい。

 それにしても去年の後半はあれよあれよという間に過ぎていった。一昨年のキッチン改装に続きバスルームの改装(どちらも中途で終わったまま)。家の中の一角は物置状態でホリデイ前半は片付けと掃除に明け暮れた。ebay初挑戦でキッズのロフトベッド2台が新しい子供達の部屋に旅立って行った。ボクちゃんの子供の時乗ってたらしいプジョーの自転車も売れたぞ。11月はボクちゃんと名古屋の路上で出会ってから20年という記念の日があったけど、忙しくて何もしなかった。。。

 女の子たちはまた背が伸びた。下のロッタは164cmで今年中には私を追い越すだろう。ピッピはもう170cmを超えてまだまだ伸びるつもりのよう。昔GPのドクターに子供たちに牛乳を飲ませるのをやめたとのだと話したら、カルシウムが足りなくなるわよと心配されたけど、あれから背はぐんぐん伸びたし骨折したことだって一度もない(チーズとアイスクリームは食べさせてたけどね)。そのドクターにピッピは喘息だと診断されたんだっけ。ロッタも同じ時期に何度も長引く風邪を引いて抗生物質を出された(絶対に飲んでくれなかったが)。喘息の薬の処方箋を破り捨て、牛乳アレルギーのことをネットで知って試しに飲ませるのをやめたら、瞬く間に咳も鼻水も止まり、以来風邪のひとつも引かなくなった。子どもたちが医者に会ったのはそのときが最後になった。

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 酷署が続いた新年。旧いバスタブは今は前庭の木の下にあって、水浴びにとても良い。 子供のように水と遊び、水と愉しみながら、この原始的な涼のとり方がエアコンよりもはるかに気持ちがいいとしみじみ体で感じた。

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1954年7月27日


 石垣りんさんは、社会問題を告発する詩をいくつか残している。これは59年前の今日の日記。彼女は今、雲の上からどんな想いで日本を見つめているだろうか。

 

日記より 

 

一九五四年七月二七日
これは歴史の上で何の特筆することもない
多くの人が黙って通りすぎた
さりげない一日である。

 

その日私たちは黄変米配給決定のことを知り
その日結核患者の都庁坐り込みを知る。

 

むしろや毛布を敷いた階段、廊下、庭いっぱいに横たわる患者ストの様相に
私は一度おおうた眼をかっきりと開いて見直す。

 

明日私たちの食膳に盛りこまれる毒性と
この夜を露にうたれる病者と
いずれしいたげられ、かえりみられぬ
弱い者のおなじ姿である。

 

空にはビキニ実験の余波がためらう夏の薄ぐもり
黄変米配給の決定は七月二四日であった、と 新聞記事にしては、いかにも残念な付けたりがある、

 

その間の三日よ
私はそれを忘れまい。

 

水がもれるように
秘密の謀りごとが、どこかを伝って流れ出た
この良心の潜伏期間に
わずかながら私たちの生きてゆく期待があるのだ。

 

親が子を道連れに死んだり
子が親をなぐり殺したり
毎夜のように運転手強盗事件が起り
三年前の殺人が発覚したり、する。
それら個々の罪科は明瞭であっても
五六、九五六トン
四八億円の毒米配給計画は
一国の政治で立派に通った。

 

この国の恥ずべき光栄を
無力だった国民の名において記憶しよう。

 

消毒液の匂いと、汗と、痰と、咳と
骨と皮と、貧乏と
それらひしめくむしろの上で
人ひとり死んだ日を記憶しよう。

 

黄変米配給の決定されたのは
残念ながら国民の知る三日前だった、と
いきどおる日の悲しみを
私たちはいくたび繰り返さなければならないだろうか。

 

黄変米はわずか二・五パーセントの混入率に
すぎない、
と政府はいう。

 

死んだ結核患者は
あり余る程いる人間のただ一人にすぎず
七月二七日はへんてつもない夏の一日である、
すべて、無害なことのように。

 

  (現代詩文庫46 「石垣りん詩集」思潮社より)

 黄変米(おうへんまい)事件についてはここで詳しく読める。当時の厚生大臣が試食して安全性をアピールするなんて、まるで原発事故後の今日の政府の対応そのものだ。


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私の故郷

 3年半ぶりの日本。あれからもう3ヶ月が過ぎていってしまった。既に夢の中というか、オーストラリアに戻った瞬間に私の心は日本滞在前の日常モードにすんなりとリセットされてしまっていた。それと同じことだが、日本に着いた瞬間にオーストラリアでの生活の記憶がぷつんと消えて思い出せなくなってしまっていた。

 行きのフライトではゴールド・コースト空港で7時間もの出発遅れで散々な目にあった(実は帰りも関空のチェックインで2時間も並ばされるという酷い目に遭ったのだが)。なにしろ関空に飛行機が到着したのは翌朝の午前3時過ぎ。ホテルに電話しても繋がらないし、空港前に並んでいたタクシーはホテルは近すぎるから乗せてくれない(こんなことあり!?)。結局ホテル宿泊、というか仮眠とお風呂と朝食はあきらめて飛行機会社が臨時で出してくれた難波行きのバスに乗って始発の近鉄特急で名古屋に帰ることにした。しかし信じられないことに、切符を買おうとしたら現金しか取り扱ってないと言われ、ゾンビのような顔をして真っ暗な寒い難波のビル街をATMさがして歩く羽目になった。コンビニを見つけ、マシーンに銀行カードを入れて日本の紙のお金が出てきたときは本当に嬉しかった。

 私の目に映った311以降の最初の日本の景色。平常通り規則正しく移動する都会の日本人の姿。駅や交差点やお店のエスカレーター付近で繰り返されるアナウンスの雑音。知っていたはずの日本の日常に凄く違和感を感じた。なるべく他人とコミュニケーションをとりたくない、人と係わりたくない、そんな雰囲気がなんとなく伝わってくるのだ。それは単に日本人のシャイな性格だからなのか?それとも私がオーストラリアに長く住んでしまったから感じるだけのことなのか?

 他にもお店での若い人々の「いらっしゃいませ~」と繰り返される鼻にかかった奇妙な声が馴染めなかった。彼らはその時作業しながら自分の手を見ながらいらっしゃいませと繰り返し、その目を誰にも向けていない。大きな全国チェーンの古本屋に行った時もマニュアル通りに接客というか、パチンコ屋のようにただ自動的に音声を回転させている店員のアナウンスが不思議だった。そういえば、忙しく動き回る店員をやっと捕まえて「詩集はどこにありますか?」と訊くと、案内されたのは手芸の本の並べてある一角。これはもう苦笑いをするしかなかったっけ。だってまるで茨木のり子の「詩集と刺繍」だったから。

 

  詩集と刺繍

  詩集のコーナーはどこですか
  勇を鼓して尋ねたらば
  東京堂の店員はさっさと案内してくれたのである
  刺繍の本のぎっしりつまった一角へ

  そこではたと気づいたことは
  詩集と刺繍
  音だけならばまったくおなじ
  ゆえに彼は間違っていない

  けれど
  女が尋ねたししゅうならば
  刺繍とのみ思い込んだのは
  正しいか しくないか

  礼を言って
  見たくもない図案集など
  ぱらぱらめくる羽目になり
  既に詩集を探す意志は砕け

  二つのししゅうの共通点は
  共にこれ
  天下に隠れもなき無用の長物
  さりとて絶滅も不可能のしろもの

  たとえ禁止令が出たとしても
  下着に刺繍するひとは絶えないだろう
  言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ

  せめてもとニカッと笑って店を出る

 

 雪のクリスマスに両親と一緒に行った一泊二日の山中温泉バス旅行。名古屋駅からの送迎バスの旅は快適で子供達もボクちゃんも楽しめた。インターネットで見つけた格安温泉宿だったけど、本当にそれで採算がとれるのかと心配になった。

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8月15日

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 LOTRのイヴェントは大成功を収めた。2日間で3回も同じ映画を観た子供たちは、続きが観たくて観たくてさっき完結編を借りてきたDVDで観終わったところだ(今日はブリスベンは祝日だった)。大きなスクリーンの迫力には劣るけどね。

 それにしても生のオーケストラが奏でる演奏と生の合唱が、指揮者の腕でスクリーンのフィルムと同時に進行していくなんて本当に凄い、もう夢のようなコンサートだった。

 プログラムの紹介ページによると指揮者のルードヴィッヒ・ヴィッキはスイスローザンヌ出身で音楽好き一家に生まれ、毎日歌ったり演奏したりして育ったそうだ。特に影響を受けたのがモリコーネなどの映画音楽だったというのが興味深い。なるほどそれだけ映画音楽に対する憧憬が深いと知ると、彼のこの神業のような指揮にも納得がいく。この上のアルバムは彼の指揮で昨年リリースされたそうだ。

 最終公演では演奏が終わってなんとうちのロッタがステージの指揮者のところまで下りていってコアラのぬいぐるみ(!)をプレゼントするという大役を果たした。私達は昼間の公演に行ったのでこの目で見ることができなかった。指揮者と握手したロッタの姿見たかった。でもほんとに合唱団の子供たちみんながんばった。中にはこっくりこっくりしてた子も居たんだって。かわいいなあ。

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 8月15日。

 今日は義理の父母の58回目の結婚記念日。昨日は義理母がグループ会食があって出かけなくてはならないというので、昼間の3時間義理父を残した家の留守番を頼まれた(最近こういうのがよくある)。彼らの家はここから車で10分ほど。介護のような責任は任されていない。シャワーの手伝いは毎日やってくる訪問介護員の役目である。私が手伝うのは留守番と食事の世話くらい。彼が寝ているほとんどの時間は、義理母のアンリミテッドのインターネットを利用してうちでは観られないYouTube三昧なので退屈しない。

 毎週日曜日は彼らに遅いブレックファストを作ってあげて(作るのはボクちゃん)一緒に食べるようになってもう2年くらいになった。医者から義理父がもう長く生きられないと告げられて以来ずっとである。86歳の彼はもう何も残っていないかのようにほとんど一日中静かに寝ている。それでも若い頃の、戦争時代の記憶だけは昨日のことのようにしっかり憶えているから驚きだ。というか、昨日のことだと彼は思っているのだ。第二次大戦が終わった時彼は19歳。空軍の看護士として働いていて、日本軍の爆撃で負傷した兵士の手当てをしたそうだ。

 

 

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大地はまだ・・・

 2年前、誕生日に友人が贈ってくれた「わたしを束ねないで」が私の新川和江さんの詩との最初の出会いだった。

 茨木のり子や石垣りんと同じように優しく強さを持った言葉に感動し、もっと早く知っておけばよかったと思った。特に彼女の詩には母性愛を強く意識した作品が多い。でも詩の心を読むことが出来る時というのは、その詩を必要としている時なのだと思う。娘であり、妻であり、母親であり、一人の人間として生きることとはどういうことか。311以降、幾度となく彼女の詩集を開く。今がその時。そしておそらくこれからもずっと。

 

 テレヴィジョン

海の向こう
暗殺された大統領の葬列が
若い夫人の喪服のひだが 見えてしまうおそろしさ
からだに針を突き刺している

ヒンズー教の老人が
インスタント・コーヒーの製法が
栃ノ海の突き落としに土俵をとび出す柏戸が
南ベトナムのクーデターが
福井県に降る雪が
月のあばたが見えてしまう おそろしさ

あたたかな部屋
あかるい灯の下
遠いものの姿が かたちが
手にとるように見えるのに
見なければならないものの姿が かたちが
ますます見えなくなってしまう 
ことのおそろしさ

たとえば
すぐそばにいる あなたの心
こどもの明日
わたしの今日
窓のそとの闇

 

 

 

 きずだらけのこころは・・・・・・

きずだらけのこころはときどき
ひらがなのくさむらにかくします
しかくいもじはかどがあたつていたいのです
そのくさちは 
びるでぃんぐのまちからもとほく
こんくりいとのはしなどもかかってゐない
とがつためつきのひととゆきかふこともない
しずかなむらのはずれにあります
いちにちぢゆうそよかぜがふき
やはらかなひがさし
きこえるのは
のどかなうしのなきごゑくらゐなものです
やがてこころは
ひをすつてふくらんだ 
ごむまりのやうに
ひかつてはずんで
ころころまろびだしてきます
そのやうすはくさがみどりのほそいてで
こころをおしだしてくれたやうに
はたからはみえるはずです
そしてあるいは
ほんたうにさうかもしれないのです

 

 

 今朝の散歩道のワトル。ブリスベンの冬の空は絵の具をチューブから直接搾り出して塗りつぶしたように青い。元気なミツバチたちが忙しそうに花から花へと飛び回っていた。

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永久に原発ゼロの日を信じて

 2012年5月5日原発稼働ゼロの日。北海道泊原発が定期検査のため今日日本時間午後5時に運転中の原子炉に制御棒を挿入、出力を下げる作業が始まり、午後11時に発電出力がゼロになり、6日の午前2時には核分裂が停止するそうだ。原発稼動ゼロは実に42年ぶりのことだという。

 今年の初め強く信じたことが現実に起こった。永久に原発ゼロの日に向けて大きな一歩であると信じる。みんなが目を覚ますときが来た。

 「90年生きてきて今ほど悪い日本はありません。このままの日本を若者に渡せない」  
 寂聴さん、霞が関でハンスト参加 大飯原発再稼働に反対 共同通信社

 瀬戸内寂聴さんが反原発の座り込みで語ったこと (NAVERまとめを見つけたのでこれも追加)

 寂聴さんの言葉

 90のばあさんがここに座ったら、マスコミに取り上げられ、それを見た若者が張り切って行動してくれると思って。」 出典東京新聞

 広島や長崎で原爆の被害を受けた日本が唯々諾々と原発を使っているのは恥ずかしい。原発はなくさないといけない。」 出典goo ニュース

 誰かに任せてなんで(原発が)無くなるんですか。自分たちで戦って無くさなきゃいけないんです。人任せにしてどうして無くなりますか。自分が動かないとダメですよ。」 出典Twitter

 (原発の再稼働について)何を考えているのかと思った。これまでにないくらい日本の状態は悪くなっている。」 出典瀬戸内寂聴さんらが反原発を訴え NHKニュース 

 これまで生きてきて、福島の原発事故のような恐ろしいことは戦争以外に一度もなかった。政府は再稼働をどうして焦るのか。」 出典東京新聞 

 「原発事故は人災であり、同じことを繰り返しては子どもや若い人たちがかわいそうだ。」 出典東京新聞 

 「(大手メディアに向けて) あなた達記者も、命をかけて報じなさい。」 出典Twitter

 寂聴さんありがとう。どうか無理をなさらずに。

 

 花が咲いて今は実が収穫時の雑草のごとき紫蘇。明日こそ摘まなきゃ。今年は塩漬けにするの。

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風に吹かれて

 ゆったりと2012年が明けたと思ったら、あっという間にもう10日。ブリスベンは新しく年が変った途端、海に行きたくなるような夏らしい天気が続いている。

 とても嬉しいことに、気温が30度を超えると体の調子がすこぶる良い!もちろんエアコンなど必要なし。首から濡れタオル提げて靴下はいてると足がじーんと心地よく、持病の梨状筋症候群による坐骨神経痛は一体どこへやら。頭がボーっとするのはまたそれでよいの。カウチに座ったらウトウトうたた寝してしまう。熱いほうじ茶(オーガニックショップで手に入るスリランカ産?の有機緑茶を煎ってみたらこれがなかなかいけるのだった)がまた美味しく感じるのは年のせいだろうか。

 今年は庭のアイヴォリー・カール・フラワーの開花が例年より早い。数日前ボクちゃんが育ちすぎた枝を切っていた。ほんとにすごい勢いで生長するから、彼は家が倒されるのではないかとかなり心配している(無計画に木を植えるのはやめましょう)。切った枝の花を集めてくれたので、キッチンはずっと甘いにおいで素敵だった。

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明日への祈り

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  祈り    谷川俊太郎

一つの大きな主張が
無限の時の突端に始まり
今もそれが続いているのに
僕等は無数の提案をもってその主張にむかおうとする
(ああ 傲慢すぎる ホモサピエンス 傲慢すぎる)

主張の解明のためにこそ
僕らは学んできたのではなかったのか
主張の歓喜のためにこそ僕らは営んできたのではなかったのか

稚い僕の心に
(こわれかけた複雑な機械の鋲の一つ)
今は祈りのみが信じられる
(宇宙の中の無限小から 
宇宙の中の無限大への)

人々の祈りの部分がもっとつよくあるように
人々が地球のさびしさをもっとひしひし感じるように
ねむりのまえに僕は祈ろう

(ところはすべて地球上の一点だし 
みんなはすべて人間のひとり)
さびしさをたえて僕は祈ろう
一つの大きな主張が
無限の突端に始まり
今もなお続いている
そして
一つの小さな祈りは
暗くて巨きな時の中に
かすかながらもしっかり燃え続けようと
今 炎をあげる  

 

       詩集「二十億光年の孤独」1952年より

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詩集をひらくとき

 最近ツイッターからの情報で脳が容量オーヴァー気味ということに気がついた。

 キッチンに好きな詩集を何冊か置いて家事の合間に折り目の付いた頁をまた開く。

 私はここに逃げてきているのだろうか?

 違う。今生きていることを確認したいだけ。

 

   汲む   
   ―Y・Yに―   

大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました
そのひとは私の背のびを見すかしたように
なにげない話に言いました

初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始るのね 堕ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

私はどきんとし
そして深く悟りました

大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです

            茨木のり子 詩集「現代詩文庫第1期20」 鎮魂歌より

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